実例ー真実に目を向ける
リーダーにコーチングスキルをお伝えすると、よくこんな質問が来ます。
「部下に承認をすると、仕事を舐め自分も甘いリーダーだと思われるのではないか」
「質問をすると、こちらに答えがなく頼りないリーダーと思われるのではないか」
この二つの質問の背景には、
「リーダーとは威厳を持ち、賢く正しい方向へと導く人であるべきだ」
という信念を多くのリーダーが持っている、と言う事が分かります。
特にこの信念を強く持っているリーダーの多くはとても優秀で、自らが高い能力と知識を持っています。
平時の時にはパワーあふれるリーダーとして人々を惹き付ける事も出来ます。
しかし、大きな問題が起こったとき、このタイプのリーダーは
・業務を抱えすぎてしまう
・何でも顔を出さずにはいられなくなる(チェックしたくなる)
・部下が無能に思える(信頼できない)
・自分一人で何とかしようとする(任せられない)
・部下の小さなミスに怒号/逆切れをしてしまう
という行動パターンが見受けられます。
結果、必要な情報が上がってこなかったり、主観で判断してしまって大きな損失や遅延につながったりしているように思います。
こういう方のコーチングで、私が心がけている事は、「事実」ではなく「真実」に目を向けさせることです。
ある社長のコーチングをしていた時の事。
その方の話はいつも「部下は自分から動こうとしない」「都合の悪い事は自分に伝えない」など部下批判にあふれていました。
そこで私は、それって真実ですか?本当にそう言ったんですか?など、
目に見える行動に意識を向けるのではなく、相手が何を考え、思っているのか思考に意識が向くようなアプローチをしていきました。
すると、確かに本当に自分が思っている通りなのか、真実は分からないということに気づいてきます。
そして、ある日、コーチングスキルを使って部下の話を聞いてみましょう、ということになりました。
部下の話を質問で切り返し、相手に喋らせる(考えさせる)ようにする・・・最初は耐えられない様子でした(笑)
でもだんだんと部下でも真剣に考え思っている事があるんだと言う事に気づき始めたようでした。
質問をすると、自分が思ってもいないアイデアを話してくれたり、あるいは自分と同じような事を感じていたことを知ったりすることが多くなりました。
そして、ある日その社長がしみじみと、
「そうか、部下に意見を求めたり、質問をする事は、社長としての役割を放棄する事につながらない、ということが分かったよ」とおっしゃたのです。同時に人前では見せる事の出来ない、社長として押しつぶされそうなプレッシャーや不安からも少し解き放たれたようにも見受けられました。
コーチングは、私たちが役割や目の前の事象の中で見えなくなっている、
「真実」を明らかにしてくれます。
真実の元で、お互いの存在を強く感じることができ、自分と他人の信頼度を上げてくれる事でしょう。それが、一人からチームへ、組織へと変革をしていく原動力になるのではと思います。
今年はたくさんの真実に目を向けていきたいと思います。