人はなぜ相手を主体的にさせたいのか?
コーチングはこれまで様々な企業や団体で興味を持たれてきました。
上司や社長の方になぜコーチングに興味を持ったのか、理由を聞くと、
・部下が何を考えているのか分からない
・部下をもっと自ら考えて動くようになって欲しい
・何をするにも受け身の社員が多い
そんな声を良く聞きます。
つまり、多くのリーダーが、相手を主体的にさせたくてコーチングに興味を
持つことが分かります。
では、なぜ人は目の前の人を主体的にさせたいのでしょうか。
相手をコントロールしたいから・・・
自分の思い通りに動いて欲しいから・・・
そんな思いもあるのでしょう。
かなり前になりますが、大手コンサルティング会社から頼まれて、
ある塾のコーチング研修を行いました。
研修終了後、社長とコンサルタントと私で話をしたのですが、コンサルタント
は色々と指摘をします。
例えば、Aさんの研修態度は今イチですね、とか、~~部署はやっぱりやる気
が見られない、などなど。結構辛辣・・。
それを横で聞きながら、私はだんだん違和感を感じてきました。
確かに、コンサルの視点も一理あるけれど、講師として私が受けた印象はちょ
っと違う。
社員は20代、30代が多く、仕事に対して自信が持てないのに、多忙により
仕事をこなすだけでいっぱいで自分の仕事意義が見出せていないのではないか、
そんな印象を受けました。
その状況の中では、頑張っているな~と感じたので、素直にそれをお伝えしました。
すると、いきなり社長が泣き出したのです!
堰を切ったように涙を流しながら、
「そうですよね、僕もそう思っていたのに、そう思えなかった自分がいました。
社員の気持ちを分かってあげられなくて申し訳なかった。」
男泣きです。
その涙を見ながら、私は、
部下を主体的にさせたいと思う深い部分には、ただコントロールしたいとい
う思いだけではなく、
目の前の人に生き生きといて欲しい、
やりがいを持ってこの会社で(部署で)働いて欲しい
そんな願いがある、ということに改めて気づきました。
でも、普段それを意識することはほとんどありません。
というか、多くのリーダー自身も、自分の深い部分でそういう願望があるということに
気がついてはいません。
それよりも、
(本当は生き生きと働いて欲しいのに)
「ちっとも自分から動こうとしないで、何考えてんだ!」
となります。
そして、相手を主体的にさせたいと思います。
実際、私も体験があります。
もっと自分から動いて欲しいと思っているのに、動かない。
そうすると相手の行動が気になってきます。
そしてできていない状況を見る度に、「もっと主体的に動いてよ~」と思ってし
まう。
でも、ひょんなことからその人が自らの意志で動き出したのです。
その時の相手の顔の表情、きびきびとした動きは今でも忘れることができません。
あぁ、私はこの姿が見たかったんだ、
欲しかったのはこの感覚だったんだ、
と、肩の力が抜けるような、喜びでいっぱいの幸せ感でした。
主体的にさせようと、こちらが主体的に動いている間は手に入らない感覚だと、
その時気がつきました。
相手を主体的にさせるのではなく、
勝手に主体的になるためにはどうしたらいいのか、
そこまでを意識したコーチングでありたいと、いつも考えています。